ビッグネームを掻き集めたスターチームのレイカーズと相対するは堅牢な守りを固めるディフェンスチームのピストンズ。2004年NBAファイナルは華やかさならばレイカーズの圧勝だったが、ゲームの結果はその逆となった。予想を裏切る4勝1敗でレイカーズを破りピストンズがNBA制覇。栄えあるファイナルMVPに輝いたのは、それまで5チームを渡り歩いたジャーニーマン、チャンシー・ビラップスだった。
ピストンズのチームスタンスは、スペシャリストが各々の仕事を完璧にこなすというものだった。言わずと知れたディフェンスのスペシャリストであるベン・ウォーレス、ファイナルでコービーを抑え込んだストッパーのテイショーン・プリンス、チームにアクセントとガッツを加えるラシード・ウォレス、安定的に得点を重ねるリチャード・ハミルトンなど、それぞれが特化した役割が与えられた。そしてビラップスはその役割から、いつしか「ミスター・ビッグショット」と呼ばれることになる。
ピストンズの主な得点をを担う選手はハミルトンとラシード。だが第4Qやラスト数秒という場面でボールを保持するのはビラップスだった。スター選手は勝負所でボールを託されるが、そうでない場面でもボールを保持しシュートを放つ。しかしビラップスはゲームの中盤的な場面ではパスを供給し、ゲームの流れを作ることに努める。そして勝負の際と判断する場面、または第4Qになるとチームはビラップスにボールを託し、彼はそれに1on1での得点で応えた。
ディフェンスで一時代を築いたゲイリー・ペイトンが、ファイナルではビラップス相手になす術無く得点を奪われた。ビラップスはPGのスピードにSFの力強さを備えたような選手であり、ペイントエリアへのドライブ、ポストアップでゴールに向かう。相手にとって最も厄介なのはキャリアで89.4%を維持するFT%。ファールをすれば殆どフリースローが落ちることは期待できないため、勝負所であればある程ディフェンスが難しくなる。これが彼がミスター・ビッグショットと呼ばれる理由の原点だろう。
ピストンズでの栄光を手にオールスターに4度選出されたビラップスだが、チームはサラリーキャップを空けるため2008年に彼をナゲッツにトレード。そこでもナゲッツをカンファレンスファイナルに進出させたが、2011年にはカーメロ・アンソニーの移籍騒動に巻き込まれニックスにトレード。1年も経たぬうちに自由契約になったビラップスをクリッパーズが獲得。そして今シーズン、2年契約で古巣ピストンズに戻ることとなった。
若い頃は才能が発揮されずにトレード要因にされ、キャリアを重ね有能になればビッグネームとしてトレード要因にされたビラップス。移籍を繰り返すキャリアだったが、最後の移籍先になるであろうチームががピストンズというのは彼にとって幸せなことではないだろうか。ミスター・ビッグショットの技術と経験をピストンズの若い世代に引き継いでもらいたい。
2004-2005NBAファイナル、ピストンズvsスパーズのビラップスは最強でした。パーカーじゃ止められないし、ブルース・ボウエンをつけても止まらないし、フリースローは落とさないし。4Qは殆どビラップスの1on1にダブルウォーレスのオフェンスリバウンドだけという偏り具合が面白いチームでした。また彼がピストンズのユニフォームを着るんですね~
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