2013/03/10

NBA雑談 PART.10 インディアナ・ペイサーズ

1990年代、土壇場に立つペイサーズにはいつも奇妙な期待感が漂っていた。勝利が絶望的であればある程、観客は彼の起こす奇跡を期待をする。ペイサーズ一筋18年、クラッチタイムで幾度となく対戦チームに絶望を届けたNBA屈指のシューター、レジー・ミラー。彼がNBAで築いた18年の歴史は、「バスケットボールは試合終了まで何が起こるかはわからない」という、ゲーム中に奇跡が起こる可能性を格段に引き上げた。

スーパースターと呼ばれる選手でもクラッチタイムでの活躍は難しい。チームの勝利を一身に背負う重圧。さらにそれがアウェーコートであれば会場中からの罵声が加わる。殆どの選手にとってそれらはマイナスでしかないが、ミラーは逆のようだった。
プレーオフで熾烈なライバル争いを何度も繰り広げたニックスとペイサーズ。1994年のイースタンカンファレンスGAME5、ミラーに何度も煮え湯を飲まされてきたニックスファンの映画監督スパイク・リーは、コートサイドからミラーに激しく罵声を浴びせていた。しかし思惑とは裏腹に、12点差から始まったアウェーゲームの第4Qでミラーはなんと25得点。うなだれるスパイク・リーに首を絞めるジェスチャーで仕返しをアピールした。「お前は誰かにフリーにしてもらわないとシュートが打てない!打てるものなら打ってみろ!」とコートを走るミラーに叫ぶと、ミラーはディフェンスにチェックされた状態から得点。激しく言い返すミラーから目を背けていたスパイクリーの姿は、ペイサーズ対ニックスの名物となっていた。

最も印象的なプレーは1995年イースタンカンファレンスセミファイナル。残り18.7秒の時点でニックスは6点差でリード。ミラーはスローインから3Pを決めると、相手のスローインをスティール。一瞬で方向転換し3Pラインの外に1ドリブル、ターンしながら信じられないスピードでショットを放った。ボールはネットに吸い込まれ、4秒前には確かにあったはずの6点差を0とした。勝負の掛かった残り数十秒で、バスケットボールの基本と言える「ゴールに向かう」とは逆の動きから3P。これこそが世界中でレジー・ミラーにしかできないプレー「ミラー・タイム」である。

39歳となった2005年、ミラーはシーズン終了を以て引退することを表明。プレーオフカンファレンスファイナルでピストンズに敗れキャリアの終わりを迎えた。最終戦となったピストンズを率いたのはかつての恩師ラリー・ブラウン。ゲーム終了間際、ベンチに下がったミラーを讃えるために、勝つためだけならば必要のないタイムアウトをブラウンは要求。その1分間、敵味方含め会場内の全ての人間がミラーに拍手を贈り、むせび泣き顔を覆うファンもいた。ミラーは対戦チームとそのファンを含めて敵に回す挑発的なキャラクターだったが、最高の興奮を与えてくれたミラーの引退を誰もが惜しんだ。

引退の翌年、ミラーの背番号31は功績を讃えられペイサーズの永久欠番となった。

$ブザービーターのブログ

2 件のコメント:

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    初コメ失礼します!ブログ読みました。僕はシルバーアクセサリーの職人しながらインターネットの仕事もしてる、seijiです、よろしくです!まーた拝見しにきますね!!

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    はじめまして☆記事読ませていただいたのでコメント残したいと思います!僕はミュージシャンとして世の中に発信出来る事をブログで表現していこうと思い、慣れないながら記事更新を頑張っています。もし宜しければ、ブログ内で繋がって頂けたら嬉しいです!

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