アレン・アイバーソン、ステフォン・マーブリー、スティーブ・フランシス、近年ではラッセル・ウェストブルック、デリック・ローズなど、人気の出るPGは身体能力と得点力の高いスコアリング・ポイントガードの場合が多い。しかしその多くが年齢と共に身体能力が低下、比例するように人気を失い不本意な形でリーグから姿を消している。
NBAにおいて長年スターPGでいることは非常に難しく、もしそれを実現するならば、身体能力や技術以上の何かが必要となる。HIV感染で引退したレジェンドプレーヤーのマジック・ジョンソンをスター性とするなら、引退後即座にブルックリン・ネッツのヘッドコーチに就任したジェイソン・キッドはカリスマ性と言えるだろう。
NBAオールスター出場10回、オールNBAファーストチーム選出5回、アシスト王5回など、キッドが個人として残した記録を挙げれば切りがない。中でも彼の代名詞であるトリプル・ダブルはキャリアで107回。これはマジックに続く歴代3位の記録であり、人は彼を「Mr.TripleDuble」と呼ぶ。またそれを超えるのが歴代2位のアシスト数。なんと1万2091回。偉業としか言いようが無い。
基本的に、個人成績の優れたスター選手が1人加入しただけでチームが強くなることはない。ただし例外もあり、それがジェイソン・キッドである。
2000-01シーズンのニュージャージー・ネッツの成績は26勝56敗の散々なものであり、過去7年でプレーオフ進出は1回のみのドアマッドチームだった。しかし翌年、キッドが加入したネッツはなんとNBAファイナルにまで駒を進めた。ドラフト1位のケニオン・マーティンの加入など他の要因もあったが、1人の選手がここまでチームを変貌させられることにアメリカ中が驚いた。優勝に手は届かなかったものの、その翌年もNBAファイナルに進出。これによりキッドのカリスマ性はNBAのみならず全米に認知された。
少年時代はゲイリー・ペイトンと相手にスキルを磨き、強豪の勧誘を断り自宅から近いという理由で進学を決めたカリフォルニア大学バークレー校では、トーナメント2連覇中だったデューク大学を破る。常に天才と呼ばれたキッドだったが、どうしてもNBA制覇に届かずにいた。しかし2010-11シーズン、遂にそのときが訪れる。
リーグ最高のリーダーシップと経験を持つキッドは、若手のJJ.バレアに指示を出す形でゲームメイクを行った。バレアの運動能力にキッドの経験が加わることで、マブスはリーグ最高のバックコートを生み出した。3度目のファイナルの相手はBIG3を形成したばかりのマイアミ・ヒート。若いマイアミに対し、マブスはバスケットボールIQの高さとチームバランスの良さを感じるゲーム展開で圧倒。キッド、そしてノヴィツキーやショーン・マリオンなど、長年優勝できずにいたベテランたちは遂にチャンピオンリングを手に入れた。
バスケットボールが経験のスポーツと呼ばれるのは、駆け引きやリーダーシップなど人としての引き出しの数や深さが要因である。その点においてキッドは世界最高のレベルにあり、北京オリンピックでは並みいる若手を退けて代表入りし、期待に応えるリーダーシップでアメリカの金メダル奪還に貢献した。実はキッドは、プロ入り以降の国際試合で56戦無敗という凄まじい記録を持っている。
経験値が増す一方、身体能力、瞬間的判断力、コンディションはどうしても年々低下する。コートで指示を出すことに限界を感じ始めたキッドは昨シーズン終了後グラント・ヒルと共に引退を表明した。その翌週には古巣ネッツのヘッドコーチに就任するとは、彼の人望は心底計り知れない。
歳を取り動けなくなっていても、観客に「キッドなら何かやってくれるのでは」と期待させるのがジェイソン・キッドだった。そのキッドが今度は監督として仲間に指示を出す。コート上の監督だったキッドが、本物の監督となって何を見せてくれるのか。それを見るためにブルックリンに足を運ぶ観客は少なくないだろう。
まさかいきなり監督とは(笑) パトリック・ユーイングの息子が「うちのオヤジは10年もアシスタントコーチをやってるのにキッドが監督なんておかしい!」と激おこぷんぷん丸でしたが「あんたのおとんは優勝できてないセンターで、キッドは優勝した最高のポイントガードやで(´・ω・`)」と誰もが思ったことでしょう。父を思ってのことでしょうが、そこはプロ。キッドもどんな結果になるかわかりませんが、デロン、ロペス、ジョー・ジョンソン、キリレンコ、ピアース、ガーネット、ジェット、そしてキッドと、胸躍るチームです!
思わず感嘆の声が漏れてしまう…あなたはどこを向いていてどこを見ているんですか。アリウープパスの精度がおかしいですやん。ケニオン・マーティンとキッドのコンビは最高でしたね~。キッドがどこを向いていても必ずアリウープのパスが来るという絶対の信頼でマーティンは走りまくっていました(´∀`)
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