2013/11/11

PART.37 MILLER TIME レジーミラー

ブザービーターのブログ
観客たちの表情に注目!そうゆう選手!

現役選手最高の3Pシューターと言えばレイ・アレン。アベレージな得点こそ難しくなったが、昨季NBAファイナルGAME6でヒートを救ったビッグショットは記憶に新しい。3Pシューターが真価を発揮する場面は「絶望的な場面」であり、シュートの能力はもちろんだが、その場面で最も必要なのは逆境に対する反発力である。

相手チームのホームコート、ファンがブーイングのボリュームを上げれば上げる程、集中力が研ぎ澄まされるシューターが1人だけいる。ペイサーズのレジェンドシューター、レジー・ミラー。「ミラー・タイム」の名で数々の奇跡を起こし、ブーイングと「口撃」をこよなく愛した男である。

今では退場かつ罰金処分となる行いだが、レジーは本当にキャラの立った選手だった。相手ファンの感情をわざと逆撫でしてより大きなブーイングを起こし、それを掻き消す。「失敗したら」なんてことを一瞬も考えないその態度は、彼を嫌がるファンの数十倍、彼を愛するファンを生み出しただろう。

レジーのキャラクターが最も際立つ対戦相手といえば、そう、ニューヨーク・ニックス&スパイク・リー。職業映画監督の観客スパイク・リーは、あたかもヘッドコーチのようにコートサイドに立ちニックスの障害となる選手を激しく口撃した。多くの選手はスパイクの口撃に辟易としただろうが、ミラーは同じく口撃で応戦し、さらに逆転というプレゼントでスパイクを黙らせる。

ニックスのホームコートであるマディソン・スクエア・ガーデンは、セルティックスホームTDガーデンに並ぶリーグで最もファンの熱量に満ちた会場である。1994年のカンファレンス・セミファイナル、マディソン・スクエア・ガーデンで行われたニックスvsペイサーズのGAME5は3Q終了時点でニックス12点リード。アウェイで敗戦濃厚の中、4Qにあの男が爆発。3Pシュート5本全てを沈め12分間で25得点を叩き出し逆転勝利でニックスを下した。

このときのスパイク・リーとの口論は凄まじく、「打てよ!お前はスクリーンをかけてもらってパスを受けてシュート、それしかできないんだ!」とスパイクが罵倒すると、ミラーはあえてドリブルから3Pシュートを決める。「どうだ見たか」っと言い返されたスパイクはコートサイドで沈黙。極めつけは首を絞めるチョークサイン。「4Qで息の根を止めてやる」とスパイクにジェスチャーでアピールした。なんてファンキーなんだ!

対ニックス戦でもうひとつ記憶に残るのは8.9秒8得点の奇跡。1995年カンファレンス・セミファイナルGAME1。またもニックスホームでレジーは悪夢を見せた。4Q残り18.7秒でニックス6点リード。レジーはフリースローを決め23得点していたものの、FG%は悪く3Pは僅か1本しか決められないでいた。しかしここからミラー・タイムが始まる。

ペイサーズのスローインからスタートし、ボールを受けたレジーは3Pを決め3点差に。そして逃げるニックスのインバウンズパスをレジーがまさかのスティール。そして、恐らく彼のキャリアで最も速いターンで3Pラインの外側まで戻り、シュートを放つ。ボールは見事リングに吸い込まれ、僅か3.1秒前にはあったはずの6点差を0にした。

同点となりペイサーズはすかさずファウルゲーム。ニックスのスタークスはFTを2本とも外し、そのリバウンドを取ったパトリック・ユーイングもシュートを外す。ボールはレジーの元に。ニックスにはファールする以外の道は残されておらず、レジーは大ブーイングの中フリースローラインに立つ。ブーイングを受ければ受ける程レジーの勝負強さは増していく。スタークスとは正反対にフリースローを2本とも沈めゲームオーバー。僅か8.9秒で8得点を記録した。

NBAでの絶対的なステータスである優勝経験は一度もないレジーだが、ファンの記憶にはこれ以上ない程色濃く残っている。体格は線が細く、シュートフォームも決して奇麗なものではない。溢れる闘志とバスケットボールに対する誠実さは他の選手から一目置かれ、39歳のベテランになっても第一線で戦える得点力を有した。引退するには「早すぎる」と誰もが感じるプレーを、最後のその時まで見せてくれた。

2011年2月10日、レジーが持つキャリア通算3Pシュート成功数2560本の記録がレイ・アレンによって塗り替えられた。時代が次のステップへ進んだのは確かだが、レジーが起こした奇跡の瞬間が色褪せる事は無いだろう。


4Qで25点!シュート決めるたびにコートサイドのスパイクを見るレジー…面白すぎる(笑) 喧嘩しているようですが別に仲が悪いわけではないです。レジーとスパイクは本気でしたけど、それでいてショー的な部分を含んだ不思議な関係でした。


8.9秒8得点。個人的に凄まじいターンだと思うんです。これぞ元祖「わざわざ戻ってスリーポイント」


彼がどれだけファンに愛されていたかが分かります。数多のNBA選手がいますが、これほど感動的な幕引きを見られる事は決して多くありません。このシーズン終了を以て引退すると公言していたレジー。敗戦が決まりコートから去ろうとする中、全てのペイサーズファンが彼に拍手を送り、涙を流す者もいました。しかしレジーへの拍手が止まなくともゲームは進めなければいけません。そこをなんと、敵チームであるはずのラリー・ブラウンHCがレジーへの賞賛のためだけにタイムアウトを要求。ファンとレジーの時間を少しでも長くするためだけに世界で最も素晴らしい1分を作ってくれたのです。ラリーは元ペイサーズのHCで親交はありましたが、ゲームに甘さを持ち込む監督ではありません。それだけにこの1分は非常に感動的です。これを見るだけで僕も泣けてきます。1人しかいない店員が泣いている奇妙なバスケショップ、ブザービーター名古屋駅店。

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